マルチブートの仕方(究極編)

2002/03/15
目次
  1. プロローグ
  2. Windows初級編
  3. Linux初級編
  4. 機能編
  5. Windows中級編
  6. Linux中級編
  7. その他のOS編
  8. フリーツール編
  9. 市販ツール編
  10. 裏技編
  11. 特別編
  12. 特殊環境編
  13. 究極編
  14. 豆知識編

序説

 究極のマルチブートとは何だろうか。マルチブートの本来の目的が、とにかく簡単にできることだろうか。それとも通常できないことが、できることを言うのだろうか。究極というからにはある特徴が突出していることなのだろうか。

 まあこれを突き詰めたところで、何が面白いということではないので、ここではおよそ普通に考えたら、それってマルチブートの一種なの?と思えるようなものを取り上げていきたいと思う。具体的には今まで解説してきたような、所謂ブートローダを使ったマルチブートではない方法を用いて、一つのマシンで複数をOSを使うこと全般だと考えてほしい。

 


仮想PC

 仮想PCという言葉をはじめて聞いて、それが何を示すものであるかを即座に連想することができる人は少ないだろう。仮想というのは「本当はそこに実体がないのに、あたかもあるかのように見える状態」を指すことが多いと思う。通常PCを思い浮かべるとき、人によってノートパソコンなのかデスクトップパソコンなのかあるにしても、物理的な筐体(ハードウェア)としてのそれを皆さん思い浮かべるだろう。稼動するOSや更にその上で動くアプリケーションなどのソフトウェアも併せて思い浮かべるかもしれない。このように皆さんが思い浮かべるPCが、実体がないのに、あたかもあるように見えるというのは一体どういうことなのだろうか。

 仮想PCが仮想される場所、つまり「あるように見える」場所は一つのOS上だ。あるOSの一つのアプリケーションの中にPCが仮想されるのである。その仮想されたPCにはCPUやメモリは勿論、ディスプレイやキーボード、マウスもある。ハードディスクやCD-ROMドライブなどのドライブ類やネットワークカードやサウンドカードなどのカード類も存在する。

 また通常のPC同様、電源を入れるという行為からその仮想PCは稼動を始める。そして終了はアプリケーションを閉じ、OSをシャットダウンして、電源を切って終えるのだ。配線や取り付けはどうするの? いいえ、それは実体がないので、そんなことを考える必要はないのである。

 ここまでの話を聞いて「なるほど、仮想PCとはそういうものか」と合点がいった人は殆どいないだろう。むしろ余計分からなくなってしまったのではないだろうか。逆の方向から考えてもらってもいいかもしれない。

 皆さんがマルチブートをしていて、こう思ったことはないだろうか。「今動いているOSを止めないで、もう一つのOSを起動できたらなぁ」。マルチブートで煩わしいのは何と言ってもこのOSの起動、終了だろう。別のOSを起動するには現在使っているOSを終了しないといけない。これをしないで複数のOSが同時に一つのPC上で稼動できたら、それは非常に便利なことである。

 つまり仮想OSという概念でも良い訳だね。またあるOS上で別のOSがアプリケーションとして稼動するということでもいい。しかし現実問題としては仮想OSなどを実現するには結局ハードウェアも含めたPC全体を仮想してしまった方が結局楽だった、というかそうせざるを得なかったということで、仮想PCなるものができあがっている。

 まあ、ウンチクを並べるよりはまずは画面を見てもらった方がいいだろう。以下が仮想PCを実現するソフトウェアの一つVMwareを稼動している画面だ。

[仮想PC画面(VMware)] (→拡大図(1280x1024pixels 380kbytes))
仮想PC画面(VMware)

 上図はVMwareを使ってWindows XP上で、Red Hat Linux 6.2とTurboLinux 6.0とWindows NT Workstation 4.0を同時に稼動させている状態だ。これを見るとなんとなくイメージがつかめるかと思う。とにかく一つのOS上で複数のOSが、勿論その上でそのOS上のアプリケーションが稼動できるのである。

 それも同時に稼動できる。ここが肝だね。この同時性こそ仮想PCの真骨頂だ。Windowsを使っていて、Linuxを動かしたくなっても、今のWindowsをシャットダウンする必要がない。それぞれの仮想OS(PC)をネットワークで結び、データのやりとりを行うこともできる。

 これぞ究極のマルチブートと言うに相応しいものだと思う。ある意味マルチブートの範疇を超越したものかもしれない。詳細はそれを実現する各アプリケーションごとに見ていこう。

 


VMware

 VMwareはその名もvmware社が開発したPC/AT互換機上で仮想PCを実現するアプリケーションソフトだ。日本ではネットワールド社が販売、サポートを行っている。VMwareには、VMware WorkstationVMware GSX ServerVMware ESX Serverなどのバリエーションがある。このうち個人で使うとすると「VMware Workstation」になるだろう。他は非常に高価だ。従ってここでも「VMware Workstation」についてのみ解説を行う(今後単にVMwareと呼ぶ)。以前はWorkstationの廉価版のExpressというバリエーションがあったが今はもう無いようだ。

 アプリケーションソフトというからにはある特定のOS上で稼動するソフトウェアである。現在VMwareはWindowsNT4.0/2000/XP上で稼動するバージョンとLinux上で稼動する2つのバージョンがある。

 このようにVMwareというアプリケーションソフトが稼動するOSをホストOSと呼ぶ。一方VMwareが実現する仮想PC上で稼動するOSをゲストOSと呼ぶ。前述の画面で言えばWindows XPがホストOSであり、Red Hat Linux 6.2、TurboLinux 6.0、及びWindows NT Workstation 4.0がゲストOSということになる。ホストOSは前述のように現在WindowsNT系とLinuxだけだが、ゲストOSはPC/AT互換機上で稼動する殆どのOSが動くと考えていいだろう。(ただし特定のOS以外は未サポートだ。サポートOSはちゃんと確認してほしい。)

 ここではVMwareの詳しい使い方は解説しない。実際インストールしてみると仮想PCの構築、ゲストOSの導入などもウィザードに従って行えば、簡単にできる。バージョン3.1から日本語版もできたので殆ど困ることはないだろう。使い勝手自体も結構直感的に使えるようになっていて初心者でもインストールなら問題なく行えるだろう。

 主に使っていく上ではまりそうな部分とか、概念的なことから解説していく。解説は2003年3月現在最新版のバージョン3.2の評価版(製品版との違いはない)を使う。

[VMware Workstation 3.2 for Windows のメイン画面]
VMware Workstation 3.2 for Windows のメイン画面

 PC上のある実体(ハード的なものでもソフト的なものでもいい)を外部からは別のものであるかのように見せかけることをコンピュータの世界ではよく行う。またこれをエミュレートする(真似る)」という言い方をする。Telnetなどは「端末エミュレータ」などと呼ばれるが、あれもひとつのWindowがひとつのPCやワークステーションの端末の真似をしている、ふりをしている訳である。

 CPU、メモリ、ハードディスクなどPCに必要な各ハードウェアをそれぞれソフト的にまたハード的にエミュレートして一つの仮想PCを実現する。言わば仮想PCはエミュレータの塊、すべてがエミュレータなのだ。

 上図のメイン画面では左のリストに既に作成したいくつかの仮想PCがリストアップされている。そのうちの一つの「Windows 2000 Professional」という仮想PCを選択しているところだ。この仮想PC「Windows 2000 Professional」にはメモリが128MB搭載されていて、SCSIのハードディスク一つとCD-ROMが一つ、フロッピーディスクドライブ、ネットワークアダプタ、USBポートが2つなどが、エミュレートされていることが分かる。また現在は電源が入っていない状態であることも分かるだろう。

 早速、この仮想PC「Windows 2000 Professional」を起動してみよう。ツールバーのパワーオン」ボタンをクリックする。

[仮想PC(ゲストOS)の起動]
仮想PCの起動

 見慣れたBIOSの起動画面が見えてくる。ちゃんとBIOSもエミュレートされていてPhoenixBIOS 4.0 Release 6.0が採用されていることが分かるだろう。CPUの種類メモリサイズ、またCD-ROMが接続されていることも分かる。このような画面を見ると、なるほどPCが仮想されているのだなということが、かなり実感できると思う。

 OSのインストールなども、このまま起動ディスクやCD-ROMブートで、通常のPCのような感覚でインストールしていくことができる。この空間の中に完全に一つのPCが存在しているのである。

 

 因みにエミュレートといっても、実際のホストOSが稼動している物理的ハードウェアをそのままエミュレートするものとVMware内部で実体とは異なるものをエミュレートするものとがある。前者は厳密にはエミュレートとは言えない。実際エミュレートしていると言えるのは後者だけだ。またエミュレートする場合も、実際に販売されている特定のベンダーの特定のハードウェアをエミュレートするものと、完全にVMwareで独自に仮想した現実には存在しないものをエミュレートするものとがある。

 CPUは実際に私のマシンのもの(AMD Athlon XP 1600+)がそのまま利用されている。現実の周波数の1400MHzと表示されているのは実際のBIOSでも対応CPUでないとこんな表示になるよね。ただしチップセットIntel 440BXがエミュレートされているので、440BX上にAthlonが載ってるという、現実にはあり得ない組み合わせになってしまっている。

 BIOSは実際私のマシンはAMI BIOSだが、VMwareでは前述のようにPhoenixBIOSをエミュレートしている。実マシンがどんなBIOSを搭載していてもこうなる。BIOSの設定なども可能だ。

[BIOS設定画面]
VMwareのBIOS設定画面

 メモリもやはり実体と異なるものがエミュレートされ、事前に与えたサイズに限定される。

 メイン画面などからでは分かりにくいかもしれないが、ハードディスクも実体と異なり、ゲストOSによってSCSIハードディスクがエミュレートされたり、IDEハードディスクがエミュレートされたりする。ハードディスクドライブ自体は特定のベンダーのものでなく、vmware独自のものがエミュレートされるが、SCSIカードはBuslogic BT-958のカードがエミュレートされている。勿論実マシンにSCSIカードなど搭載されていなくても変わりない。

 CD-ROMも物理的に接続されたものに関わらず、「VMware Virtual IDE CD-ROM」という現実には存在しないATAPIのCD-ROMドライブがエミュレートされている。

 ネットワークカードは物理カードの如何に関わらず、また物理カードが無くても、「AMD PCnet PCI-II」がエミュレートされる。

 実はこういったエミュレートの方法の違いは結構使いかってに影響する。

 実際のマシンでも自分の使っているハードウェアが、あるOSでは標準でドライバを持っていないためにインストール時には認識されず、後からベンダーからドライバを入手してインストールするといったことを行ったことがある人は非常に多いはずである。

 フロッピーディスクドライブやCD-ROMドライブ、またハードディスクドライブ自体などは汎用ドライバで殆どのものが動いてしまうので大した問題ではないが、ビデオカードやSCSIカードではOSによっては苦労した経験ももつ方は少なくないと思う。

 その点、VMwareではSCSIカードはBuslogicというメジャーなSCSIカードがエミュレートされるため、殆どのOSで自動認識され、非常に便利だ。実マシンではかなりマイナーなカードを利用しているためLinuxなどがインストールできないという場合でも、仮想PCにはインストールできちゃうといったことも起こる訳である。

 一方、ビデオカードは特定のベンダーのものがエミュレートされず、VMware独自のものが利用される。従ってゲストOSインストール時に認識されない。これはあとでVMware Toolsというのもを導入することでドライバなどをインストールする。Linuxなどはビデオカードの設定に苦労したことがある人は多いと思う。一応著名なディストリビューション用に設定方法などもヘルプに記載されているが、それ以外のディストリビューションの場合、初心者にはちょっとXを立ち上げるのに苦労すると思う。

 ただしこうしたエミュレート方法は設定である程度変更することも可能なデバイスもある。SCSIに関しては「Generic SCSI」という、直接物理PCに接続されているSCSIデバイスにアクセスするモードも用意されている。にも関わらずその名の通り、一般的SCSIとして特別なドライバが必要ないからありがたい。

 また、各デバイスを仮想する訳だがストレージ系は仮想元として同等の物理デバイスを利用する場合が多い。しかし折角仮想技術を利用しているのだから、これは勿体ないということで、仮想元の物理デバイスに対して非常に柔軟だ。

 例えばCD-ROMドライブの場合、ISO9660イメージファイルを仮想元として選択することもできる。フロッピーディスクドライブもディスクイメージファイルを利用することが可能で、ハードディスクの場合はホストOS上の特定のファイルを仮想先にする方が一般的で、デフォルトではこっちになっている。

 ネットワークカードに至っては仮想元の物理デバイスすら必要とせず、ネットワーク自体を仮想してしまうような設定も可能だ。ゲストOS間で仮想的なプライベートネットワークを構築できるのだ。IPアドレスが不足しているような環境では非常に便利だ。1つのゲストOSで複数のネットワークカードをエミュレートすることも可能である。尚、物理デバイスを利用しつつも、NATを利用してIP枯渇を回避することもできる。

 サウンドカードはホストのものをそのまま利用する。USBポート、シリアルポート、パラレルポートなども利用可能だ。従ってプリンタも使えるし、USB接続の様々なデバイスを利用することができる。

 以下に主なVMwareがエミュレートするデバイスを表で纏めてみた。

[主なVMwareのエミュレートデバイス]

  エミュレートデバイス 接続実体
BIOS PhoenixBIOS 4.0 Release 6.0 なし
CPU 実CPU -
RAM SDRAM なし
チップセット Intel 440BX なし
ビデオ 独自 なし
ネットワーク AMD PCnet PCI-II ブリッジ構成時実アダプタ
ハードディスク 独自 ファイル、実ドライブ
CD-ROM 独自 実ドライブ、ISOイメージ
フロッピー 独自 実ドライブ、ファイル
サウンド 実アダプタ -
SCSI Buslogic BT-958 なし
Generic SCSI 実アダプタ

 一応、これくらいで何とか通常の使い方ならできると思う。しかしVMwareはかなり奥が深いので、もう少し高度で詳しい使い方を別途VMwareの詳細で解説しているので、本格的に利用したい方は参照してほしい。

 現在(2003年3月)バージョン3.2が最新だが、評価版を30日間使えるので一度使ってみることをお薦めする。使わないとなかなかこういった解説だけでは実感が湧かない。

 ただし価格は決してお安くない。またマシンスペックはそれなりに要求される。PCがそのまま1台ずつ増える訳だから、ディスク容量はその分必要である。メモリも同時に稼動させるなら、その分積んでないと厳しい(仮想PCを3台上げるなら、256MBでは非常に厳しい)。CPUはそれ程、同時稼動でも厳しいという印象はないが、速いに越したことはない。もっとも何台もPCを買うことを思えば圧倒的に安上がりだし、場所も取らないのでこういった点にメリットを感じる人もいるだろう。

 


Virtual PC

 Virtual PC for Windowsは仮想PCそのままの名称だが、connectix社開発、メディアビジョン販売の製品だ。機能的にはVMwareと非常によく似ており、重点をおくポイントが少し違うのかなといった印象である。ここではVMwareと比較しつつ解説していきたいのだが、あえて序説では述べなかった、仮想PCの大きな特徴をここでは言及する必要があるだろう。

[Virtual PCのゲストOSの起動]
Virtual PCの起動

 VMwareは元々PC/AT互換機上で、複数のOSを同時稼動されるために作られた。しかしVirtual PCは元来MacでPC/AT互換機をエミュレートするために開発されたものである。

 Mac上ではPC/AT互換機用のOSは通常は稼動しない。CPUの命令セットを始め、ハードウェア、ソフトウェアのアーキテクチャが全然異なるからだ。パソコンの世界がWindowsに席巻され、アプリケーション作者もMac用を作るよりはWindows用を作った方が遥かに売れるため、Mac用のアプリケーションを作る人が激減した。PC/AT互換機を使っている人はマルチブートをすることにより、一時的にWindowsを利用することは可能だ。それにより、Windows用に開発された膨大なアプリケーションを利用することができる訳である。

 しかしMacな人はそもそもMacパソコンにWindowsをインストールすることすらできない訳だ。アプリケーション作者がMac用のものを作るか、誰かが移植をしないと使うことができなかったのだ。そこでMac上でPC/AT互換機をエミュレートしてしまおうというのが、Virtual PC開発の動機な訳である。仮想PCとは元来このようにCPU命令セットまでエミュレートしてこそ本当の仮想PC(ここでいうPCはパソコンではなく、昔からPCと言えば、Macに対してPC/AT互換機のことをそう呼んだそれそのもの)なのかもしれない。

 従ってPC/AT互換機上で稼動するVirtual PC for WindowsはVirtual PCのバリエーションの中ではむしろ亜流だ。こうしたこの製品の歴史が製品の特徴や機能に現れいるかは分からないが、知っておいてもらいたい事実である。


 さて、製品の特徴だがVMwareとの主な違いをざっと上げると以下の点になる。尚評価はVirtual PCがバージョン5.1の評価版(製品版と機能が違うか不明。どこにも書いてない)、VMwareがバージョン3.2の評価版(製品版との機能違いはない)である。尚、ホストOS、ゲストOSという呼び方は双方同じだ。

  1. ビデオカード(チップ)も特定ベンダーのものをエミュレートしている。
  2. 動作がきびきびしていて違和感が全くない。
  3. Windowsのホスト、ゲスト間は非常にシームレス。
  4. ホストOSはWindows版のみ。
  5. 仮想ネットワークは未サポート。

 利点、欠点まぜこぜで書いてしまったが、ビデオカード(チップ)がS3 Trio 32/64 PCI SVGAカード(VRAM 4MB)という著名なビデオチップをエミュレートしているのは非常にポイントが高い。多くのOSで自動認識されるため、その点は非常に楽である。

 Linuxなども主要なディストリビューションはすべてインストール時にX Windows Systemの設定が完了してしまい、VMwareのように後でVMware ToolをインストールしてXを設定し直す必要がない。

 また単に楽だというだけでなく、VMwareではVMware Toolが用意されていないOSはVGA画面でしか動作させることができない。例えばSolarisの場合、VMware Toolをサポートしていないので画面がVGAにしかならないが、Virtual PCでは何も考えないでSXGAなども利用できる。しかもインストール時の設定のみで済む。

[Virtual PCのSolaris 8ゲスト]
Virtual PCのSolaris 8ゲスト

 つまりVirtual PCがたとえそのOSのゲストOSとして非対応でも、そのOS自体がS3 Trio32/64チップをサポートしていればいい訳で、このチップが著名であることからビデオまわりの設定がVMwareよりも遥かに便利である。VMwareも独自ではなく、著名なチップのエミュレートに替えればいいのにと非常に思う。
 

 また動作が非常にきびきびしている。仮想PCであるという違和感が全くないのだ。VMwareもバージョンが上がるに従って劇的にパフォーマンスが上がったが、まだどうしてもホストOSとゲストOSの動作の違いを感じる。しかしVirtual PCはホストOSからゲストOSにマウスを移動していっても、全く違和感なく、まるで吸い込まれるように入ってしまう。これには追加機能のインストールということを行う必要があるが、これ自体は非常に簡単である。
 

 更にゲストOSがWindows系の場合、ホストOSと非常にシームレスに連携できる。ドラッグ&ドロップコピー&ペーストあらゆるデータをやりとりができる。VMwareではクリップボード経由でやりとりできるのはテキストだけであった。また共有フォルダという機能を利用して、ネットワーク的なセッティングとは無関係にホストOSのドライブやフォルダをWindowsゲストOS上の特定のドライブに割り当てることができる。

[共有フォルダの設定]
共有フォルダの設定

 
 一方Windows版しかないのはPC/AT互換機版の方が亜流であることを考えると当然かもしれない。逆にWindows MEWindows 98 SEなどもホストOSとして使える。

 仮想ネットワークはサポートされないが、後述する共有ネットワークやバーチャルスイッチが利用できるので個人利用なら殆ど困ることはない。ネットワークチップも有名なDEC/Intel 21041がエミュレートされる。勿論仮想ネットワークがサポートされていないので、VMwareのようにファイアウォールを構築をすることはできない。

 
 こうした違いを見てみると、Virtual PCはWindows系、またデスクトップ環境に力を入れており、VMwareはサーバ環境に力が入っている傾向が分かる。サーバ環境なら画面がVGAでもドラッグ&ドラップができなくて、少々画面操作がぎくしゃくしても殆ど関係ない。こうした違いを認識して両ツールを選択すべきだろう。しかし個人だったらVirtual PCの方が私はいいと思う。

 更に細かな違いや共通点も説明しよう。

 物理デバイスをそのままエミュレートするものは殆どなく、CPU以外は殆どが何らかの特定ベンダーのものがエミュレートされる。いずれも著名なものがエミュレートされるので、インストール時に自動認識されることが非常に多い。

 CPUは実CPUを利用すること、及びチップセットがIntel 440BXである点などはVMwareと全く同じである。

 ハードディスクはイメージファイルしかサポートしない。VMwareのように既存のパーティションをそのまま利用することはできないがこれも通常は殆ど問題ないだろう。CD-ROMやフロッピーは物理デバイスとイメージファイルの双方をサポートしている点はVMwareと同じだ。

 BIOSはAMI BIOSをエミュレートしている。やはりBIOS設定も可能だ。

[BIOS設定画面]
Virtual PCのBIOS設定画面

 サウンドはVMwareが物理デバイスを利用していたのに対して、CreativeのSound Blaster AWE64をエミュレートしている。サウンドと言ったらこれしかないというくらい著名なものであることは言うまでもないだろう。

 USBやシリアルポート、パラレルポートなども殆どVMwareと同様に利用できる。以下に主なエミュレートデバイスを表にしてみた。

[主なVirtual PCのエミュレートデバイス]

  エミュレートデバイス 接続実体
BIOS AMI なし
CPU 実CPU -
RAM SDRAM なし
チップセット Intel 440BX なし
ビデオ S3 Trio 32/64 PCI なし
ネットワーク DEC/Intel 21041 バーチャルスイッチ時実アダプタ
ハードディスク 独自 ファイル
CD-ROM 独自 実ドライブ、ISOイメージ
フロッピー 独自 実ドライブ、ファイル
サウンド Sound Blaster AWE64 実デバイス

 VMware同様日本語版もあるし、結構直感で使えるのでこれくらいでもう困らないと思うが、簡単な使い方だけもう少し解説しよう。

 Virtual PCの場合、以下のPCリストがすべての操作と出発点になる。

[Virtual PCの仮想PCリスト]
Virtual PCの仮想PCリスト

 ここからゲストOSのインストール、起動(終了やサスペンドも)、各種設定を行う。迷ったらこの画面に戻るのがいいだろう。各仮想PCを起動してもこの画面は残っていて、上記のように各PCの状況をタイムリーに伝えている。

 それぞれのPCの設定や終了、サスペンドなどは各PCの画面からも実施できる。新規PCの作成はやはりウィザードで実施でき、以下のような設定画面で後から変更することもできる。

[各PCの設定画面]
各PCの設定画面

 上の例はネットワークの設定の画面である。ここで簡単にネットワーク設定について説明しよう。

 共有ネットワークは後ろに括弧付きでNATとあるので、VMwareのNAT設定と同様と考えてもらっていい。ホストOSのネットワーク環境を共有する訳である。通常はこの設定で十分だろう。ゲストOS同士、ホストOS、外部インターネットへのアクセスも可能だ。

 一方バーチャルスイッチは上記共有ネットワーク設定が使うNATには対応していないネットワークアプリケーションを利用せざるをえない場合や、セキュリティを制御したい場合などに使用するが、更にいくつかの選択肢がある。ヘルプには違いがあまり書いてない(そもそもヘルプで推奨している「ローカルと外部のみ」などという選択肢はない)ので、ここで私が調べた範囲でそれぞれを説明しよう。

  1. ローカルのみ
    この設定にするとホストOS内の他のゲストOSにのみアクセスできる。各ゲストOSでIP自動取得の設定にしておけば、ちゃんと同じネットワークアドレスのIPが振られる。尚、ゲストOSから見たホストOSはローカル扱いでないので、アクセス範囲に含まれない。つまりゲストOS同士のアクセスのみの設定がこれである。
     
  2. ローカルとホスト
    これは文字通り、上記「ローカルのみ」のアクセス範囲にホストOSも加えたものである。ただ各ゲストOSでIPを自動取得にしておくとうまくいかない。自動取得だと「ローカルのみ」と同じようなネットワーク設定になってしまうので依然ホストOSと通信できない。各ゲストOSに手動でホストOSにアクセスできるネットワーク設定(例えば同じネットワークアドレスにするなど)にしないといけない。
     
  3. ローカルとホストと外部
    ネットワークアクセスに全く制限のない設定がこれである。各ゲストOS同士、ホストOS、及びホストOSからアクセス可能な場所すべてにアクセスできる。IP自動取得にしておけば、自動的にホストOSと同一ネットワークアドレス、ゲートウェイ、DNSサーバなどが設定され、外部インターネットにもアクセス可能だ。
     
  4. 外部のみ
    これは上記「ローカルとホストと外部」のアクセス範囲から「ローカルとホスト」を外したものである。つまり文字通り外部しかアクセスできない。各ゲストOSを顧客に貸し出す場合などに必要なセキュリティ設定である。

 外部アクセスを行う場合、VMwareのブリッジ接続にあたるが、当然ネットワーク上で一意のIPアドレスを各ゲストOSに付与する必要がある。

 
 このツールも結構なお値段なので普通の人が購入するものではないような気もするが、やはり体験版(45日間利用可能)があるので、まずは使ってみることだろう。

 ホストOSが稼動するマシンに要求されるスペックはVMwareとほぼ同様であるが、ホストCPUはAMD K6-2が使えなかった。まあそんな古いCPUを使って仮想PCを動かそうなどという人はあまりいない(ここに一人いたが)だろう。

 


リムーバブル・ハードディスク・ケース

リムーバブル・ハードディスク・ケース

 究極のマルチブートといったら、やはりこのリムーバブル・ハードディスク・ケースを抜きには考えられないだろう。実はこれだけ各方面のマルチブートをこなしている、かく言う私も、結局はここに落ち着いている。(もっともそのひとつのハードディスク内でもマルチブートを当然やってるが)

 何といってもだ。ソフト的なことは何も考えないで済む。それぞれのOS間の干渉も、相性問題お互いの破壊も起こりえない。結局別のPCがあるのと殆ど変わらないから、マルチブート上の煩わしい問題の殆どから解放される。

 最近はアルミケースなどを使った高いものもあるが、安いものならUltra-ATA66/100対応のIDEハードディスク用フルセット(アウターケースとインナーケースを合わせたもの)で3000円程度、インナーケースだけを足すと2000円程度から入手できる。私が使っているものもそのくらいの安い製品だが、ここ数年使って、一度もリムーバブルケースによるトラブルは起きていない。

 パフォーマンス的にもまったく問題ない。ケーブルの関係で、最近のIDE用ならちゃんとUltra-ATA66/100対応のものを購入する必要があるが、対応製品ならケースを使わなかった場合とベンチマークなどを比べても全く変化なかった。

 熱問題を気にされる方もいるだろうが、専用のファンも付いているので心配ない。もっとも私などはうるさいのがいやでファンを止めてるが、それでも最近のハードディスクは熱対策もよくなったせいか、夏でも熱問題が起きたことがない。勿論7200rpmのハードディスクでの話しである。

 たとえ、抜き差しする訳ではなくても、私のようなPCの使い方をしている人間にはそもそもIDEハードディスクの電源を簡単にON/OFFできるだけでも非常に重宝している。通常の内蔵の場合、結構手間だったからね。


 もちろん欠点もある。

 まずは当然のことながら、差し替えるハードディスク間ではデータ交換ができない。まあ他のハードディスクでも、MO、CD-RWでも、他の固定の書き込み可能なドライブがあれば、それを介すればいいので多くの人は殆ど問題ないだろうが。

 それよりも多分深刻な問題はパソコン内の体積を消費することだろう。スリムシャシーケースを使っている方は勿論、マイクロタワーケースをご利用の方も絶望的だね。ミドルタワーケースを使っている方も、フロントアクセス5インチベイが不足しがちである。一時期、MOやZipドライブが結構売れてて、今後フロントアクセスベイは3.5インチが主流になっていくのかなと思われるような頃もあったが、その後のCD-R/RWの大ブレークと、最近のDVDの拡大で、今や5インチベイが花盛り。

 そこへ、内蔵ハードディスク用にも5インチベイを使ったのではその不足を免れない。最近はミドルタワーケースでも5インチベイが4つあるケースが増えてきた。これくらいだと結構楽になるが、やはり本格的に使うとなると通常6個、5インチベイがあるフルタワーケースにしないと辛いということになる。

 こうした問題をクリアできるなら、非常に楽で安定したマルチブート環境を提供してくれるソリューションだと思う。

 


BIOS切り替え

 現在のPCのBIOSは殆どがブートシーケンスを変更できるようになっている。従ってBIOSの設定を切り替えるだけでも簡単なマルチブートが可能である。

 まあ究極のマルチブートといえる程、便利でも、他の方法と比べて優れた点がある訳でもないが、ブートローダは今一よく分からないという人には手っ取り早い方法かもしれない。

 利点は今も述べたようにブートローダなどの特別なソフトはいらないし、特別なハードウェアも必要ないので、難しいことを考える必要が一切ないということだろう。

 一方欠点はなんと言っても面倒なことだろう。PC起動時に一々BIOSの設定画面を起動しないといけない。またあくまで切り替えるのはディスクドライブ単位となるので、ディスク内のパーティションを切り替えることはできない。

 もっとも面倒と言っても、慣れれば30秒程でできてしまうから、切り替え頻度の少ない人は結構この方法を使っているのではないだろうか。マルチブートを行っている人も、各OSを満遍なく使う人は少なく、特定のOSの使用頻度が圧倒的に高いという人が多いと思う。週に一回程度しか使わないOSなら、この方法でも別に不便ということはないだろう。

 


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